「貞操権侵害の慰謝料の相場はどのくらいになるのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
既婚者からだまされて肉体関係を持ってしまったら貞操権侵害となるので、相手に慰謝料を請求できます。
ただしどのくらいの慰謝料を請求できるか知らなければ適正な請求金額も定められませんし、相手との交渉も有利に進めにくくなるでしょう。
この記事では貞操権侵害の慰謝料相場について、弁護士が解説します。
交際相手から「未婚です」などとだまされて肉体関係を持ってしまった方は、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
貞操権侵害の慰謝料相場
貞操権侵害とは、人が性的な事項について自由に意思決定する権利である「貞操権」を害する違法行為です。
典型的な貞操権侵害のケースは、既婚者が「独身です」などと言って相手をだまして肉体関係を持った場合です。
人は通常、不倫しようと思っていない限りは既婚者と肉体関係を持とうとは思わないでしょう。
相手から「未婚」と説明され、「将来結婚の可能性もある」と信じて肉体関係をもつと、自由に性交渉について決定したとはいえません。よって貞操権侵害となり慰謝料が発生するのです。
貞操権侵害の慰謝料相場は、50~200万円程度です。
具体的な金額は個別のケースにおける具体的な状況によって異なってきます。
事案によっては300万円やそれ以上の慰謝料が認められる可能性もあります。
貞操権侵害の慰謝料が高額になるケース
以下のような事情があると、貞操権侵害の慰謝料は高額になりやすい傾向があります。
- 女性の年齢が低い、特に未成年のケースなど
- 女性が妊娠し、出産や中絶をした
- 男性が女性に対し、交際や肉体関係を強要した
- 男性の嘘が巧みで悪質だった
- 嘘をついてだましたことが発覚した後、男性側の対応が不誠実だった
中には500万円もの貞操権侵害の慰謝料を認めた裁判例もあります。
3.貞操権侵害の裁判例
貞操権侵害について、具体的にどういった裁判例があるのかみてみましょう。
100万円の慰謝料を認めた裁判例(東京地裁平成27年1月7日)
既婚男性が独身女性と2年間交際したケースです。
男性は女性に「独身である」と告げて、結婚の話も持ちかけていました。
男性が、妻からのメールを「妹からのものです」と説明していた事情もあります。
女性は男性を独身と信じ、結婚を予定して両親や職場に男性との関係を話していました。
また女性が別れ話を切り出したところ、男性は関係を継続するために女性をつなぎとめようとしました。
さらに男性が別居中の妻との関係を修復して妻を妊娠させた事情もあります。
このケースにおいて、裁判所は貞操権侵害の慰謝料を100万円と認定しました。
500万円の慰謝料を認めた裁判例(東京地裁平成19年8月29日)
既婚男性が独身女性と12年間交際し続けたケースです。
女性は交際当初20代でしたが別れたときには30代になっていました。
また男性は女性に既婚であることを告げず、2人は結婚の約束もしていました。
女性は男性が未婚と信じて結婚を期待していました。
また女性は男性の子どもを3回も妊娠し、2回は中絶して3回目に子どもを出産した事情もあります。
ところが男性は女性が出産したと知ると別れようとしました。
女性の方から認知請求の裁判を起こされたため、最終的には任意で認知した事情もあります。
裁判所は男性の行為に強い違法性を認め、500万円という極めて高額な慰謝料を認めました。
20万円の慰謝料が認められたケース(東京地裁平成30年1月19日)
男性が女性に対し、独身と説明して肉体関係を持ったケースです。
肉体関係を持った翌日、男性は女性に「実は既婚で子持ち」であると告げました。そして「妻とは離婚を考えていいて、君と結婚したい」などと話しました。
その後も女性に対し「妻と離婚する」と思わせて約半年間、肉体関係を伴う交際を継続しました。
交際していた頃、男性の年齢は47歳、女性は29歳でした。
女性は男性にだまされたことによって大きな精神的苦痛を受けたとして500万円の慰謝料を請求しましたが、認容されたのは20万円でした。
なお本件では男性が女性へ金銭的な支援をしていたこと、女性が交際相手の男性以外の男性の子どもを妊娠したことなどの事情があったため、慰謝料が減額された可能性があります。
交渉なら慰謝料額は自由に決められる
以上のように、裁判した場合の慰謝料額には相場があります。
ただし示談交渉で解決する場合、必ずしも裁判の相場に従う必要はありません。
当事者が納得するなら、基本的にいくらに設定してもかまわないのです。
ただし脅したりして強制的に高額な慰謝料を払わせると違法行為となってしまうので、そういった行動をしないように注意しましょう。
無料で適正な慰謝料額を算定します
貞操権侵害でどのくらいの慰謝料を請求すれば良いか迷われた場合には、弁護士へ相談しましょう。
無料で適正な慰謝料の金額を算定させていただきます。
難波みなみ法律事務所では貞操権侵害を始めとする男女問題の解決に積極的に取り組んでいます。
お困りの際にはお気軽にご相談ください。