配偶者が不倫や浮気をした場合、その不貞配偶者と不貞相手に対して損害賠償請求することができます。
しかし、いつまでも慰謝料請求をすることができるとなると、権利関係が不安定な状況が長期間続いてしまいます。
本コラムでは、不貞慰謝料の消滅時効について解説します。
このページの目次
1.不貞行為とは
不貞慰謝料は、不貞行為によって夫婦の共同生活の平穏を害することによって発生します。
ここでいう不貞行為とは、配偶者以外の人と性行為を行うことをいいます。
性行為以外の行為、例えば、オーラルセックス、キス、食事に行くといった行為は不貞行為には該当しません。
2.不貞慰謝料の時効
不貞慰謝料にも消滅時効があります。
つまり、不貞行為の後に慰謝料請求をすることなく漫然と放置してしまうと、権利が時効によって消滅してしまいます。
2-1.時効の基本
不貞行為に基づく損害賠償請求は、不法行為による損害賠償請求です。
不法行為の損害賠償請求権は、①損害と加害者を知った時から3年、②不法行為があった時から20年を経過することで時効となります。
ただ、当然に消滅するのではなく、消滅時効の援用をしなければ時効の効果は発生しません。
つまり、『時効の援用をします。』という意思表示を相手方にしなければなりません。
2-2.損害を知った時とは
不貞慰謝料の時効については、請求する相手が不倫をした配偶者なのか不倫相手なのかによって考え方が変わります。
厳密には、不貞配偶者には不貞慰謝料を含んだ離婚慰謝料を請求します。
他方で、不貞相手には、離婚慰謝料の請求は原則として請求できないため、不貞慰謝料のみを請求します。
そのことから、損害を知った時の起算点が変わります。
2-2-1.不貞配偶者に対する請求
不貞配偶者に対する慰謝料請求の場合、離婚をした時に、不貞行為とそれを原因とした離婚による損害が現実化すると考えられます。
そのため、不貞配偶者に対する離婚慰謝料は、離婚時から時効が進行します。
2-2-2.離婚慰謝料とは
離婚慰謝料とは、離婚という結果が生じたことによる慰謝料です。
これに対して、離婚原因慰謝料と呼ばれるまのがあります。
離婚原因慰謝料とは、離婚を招いた原因によって生じる慰謝料です。
例えば、不貞行為によって離婚した場合、不貞行為の慰謝料は離婚原因慰謝料となり、離婚それ自体は離婚自体慰謝料となります。
離婚自体慰謝料は、離婚原因慰謝料を包摂する関係にあり、離婚自体慰謝料は離婚原因慰謝料に幾分か加算されるイメージです。
2-2-3.不貞相手に対する請求
不貞相手は、当然ですが配偶者とは夫婦関係にない以上、配偶者に対して貞操義務を負いません。
そのため、不貞相手は、離婚それ自体の慰謝料を負いません。
よって、不貞行為を知った時に不貞行為による損害を知ったといえます。
つまり、不貞行為を知った時から時効が進行します(ただし、加害者を知っていることを前提とします。)。
2-2-4.離婚慰謝料を負う場合も
不貞相手も、例外的に離婚自体慰謝料を負う場合があります。
夫婦を離婚せざるを得ない状況に追い込んだといえる特段の事情があれば、離婚自体慰謝料を請求できます。
不貞相手が、不貞行為をするだけに留まらず、離婚に至らしめるように、嫌がらせやつきまとい等の働き掛けを積極的に行ったような場合には、例外的に不貞相手も離婚に伴う慰謝料の責任を負う可能性があります。
不貞行為とその不貞相手を知ってから3年以上が経過している場合には、この例外的なケースでなければ、不貞相手に対して慰謝料の請求は難しくなると解されます。
2-2-5.同棲している場合の時効
配偶者が不貞相手と同棲している場合です。
男女が同棲をしている以上、肉体関係を伴う共同生活をしていると考えられます。
そのため、同棲関係は、継続して不貞行為を繰り返している状況といえます。
同棲関係のような継続的な不貞関係であれば、その同棲関係を知った時から時効は進行すると解されています。
2-3.加害者を加害者を知った時とは
不貞慰謝料の時効が進行するためには、不貞行為や離婚による損害が発生しただけでなく、加害者を知ったことまで必要です。
加害者を知ったといえるためには、加害者に対する損害賠償請求をすることが可能な程度に加害者の情報を知ったことが必要です。
そのため、不貞慰謝料請求の場合、不貞相手の住所及び氏名を知った時が加害者を知った時と解されています。
2-4.20年の時効
たとえ不貞行為の存在や加害者の氏名・住所を知らなかったとしても、不貞行為の時から20年が経過すれば、時効により不貞慰謝料請求は消滅します。
かつては20年の期間は除斥(じょせき)期間と呼ばれていましたが、現在は法改正により時効となりました。
3.時効の更新(中断)
時効の更新とは、一定の事情が生じた場合に新たに時効期間が進行することをいいます。
時効の更新事由としては以下のものがあります。
- 裁判上の請求等を行ったうえで、確定判決によって権利が確定したとき
- 強制執行等が終了したとき
- 承認
①については、訴えの提起等の裁判手続を想定しています。
ただ、訴えの提起だけでは時効は更新せず、裁判所による判決が確定することが必要となります。
③については、不貞慰謝料の存在を認める言動をした場合を想定しています。
例えば、配偶者から不貞慰謝料の請求を受けた際に、『間違いありません。』と慰謝料の存在を認める場合だけでなく、『支払いますので少し待ってほしい。』という支払猶予を求める場合も承認となります。
さらに、慰謝料の請求を受けて、慰謝料の一部を支払った場合にも、慰謝料全部について時効の更新となります。
3-1.時効の利益の放棄
時効の更新は時効期間が到来するまでを想定しています。
時効期間が経過した後、時効の更新はありません。
しかし、時効が完成したとしても、時効の援用をすることなく、一部弁済、支払猶予、債務の存在を認めるといった言動を行うと、消滅時効の主張ができなくなります。
時効が完成しているからといって、漫然と放置するのではなく、適切に時効の援用することが大事です。
4.弁護士に相談しよう
不貞慰謝料の請求を受けても慌てずに対応することが重要です。
慌ててしまって、思わず『支払うので待ってほしい』と言ってしまうと、時効がリセットされてしまいます。
慰謝料請求を受けても慌ててに対応することなく、まずは弁護士に相談することが重要です。
初回相談30分を無料で実施しています。
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