配偶者が別の異性と不倫・浮気(不貞行為)をした場合、他方の配偶者は、不貞配偶者や不貞相手に対して、慰謝料請求をすることができます。
しかし、不倫浮気が別居後に行われている場合でも、その不倫浮気は慰謝料請求の対象となるのでしょうか?
このページの目次
1.不貞行為とは?
不貞行為とは、配偶者以外の異性と性行為を行うことをいいます。
様々な見解がありますが、不貞行為は挿入行為を伴う性行為に限定されています。
- 性交に類似する行為(オーラルセックス等)
- キスや胸を触る行為
- 2人で食事に行く
といった行為は、不貞行為には該当しません。
不貞行為に該当しないといっても、夫婦関係の平穏を害する行為であれば、慰謝料請求の対象となり得ます。
2.不貞行為が慰謝料の対象となる理由
不貞行為を行った場合に、慰謝料等の損害賠償を負担する理由は何でしょうか。
夫婦は、平穏な生活を送り、夫婦関係を維持させることについて法的な保護された権利利益を有しています。
しかし、貞操義務を負っている配偶者が他方配偶者以外の異性と性行為を行った場合、夫婦関係の平穏が害されます。
夫婦関係の平穏という権利利益が侵害されたことにより、精神的な苦痛等の損害を受けたのであれば、その精神的な苦痛等に見合った損害賠償を負担しなければなりません。
3.別居後の不貞は違法か?
不貞行為が慰謝料の対象となる理由は、法的に守られた夫婦関係の平穏を害するからです。
そうだとすれば、不貞行為の時点で既に夫婦関係が破綻しているのであれば、不貞行為による権利侵害の対象が存在しないことになります。
では、不貞行為の時点で夫婦が別居している場合には、既に夫婦関係は破綻していると捉えることができるのでしょうか。
3-1.婚姻関係の破綻とは?
婚姻関係の破綻といえるためには、離婚届は提出していないものの、ほぼ離婚しているのと変わらない状態といえることが必要です。
ほぼ離婚しているといえるのかは、様々な事情を考慮して判断されます。
• 同居の有無
• 食事の有無
• 同じ家計か
• 夫婦の性交渉の有無
• 離婚に向けた行動の有無
• 外出や旅行の有無
4.別居により破綻となるのか?
離婚に向けて別居を開始させた場合、婚姻関係が破綻したと認定されることがあります。
しかし、別居した一事のみで婚姻関係の破綻を認定されることはありません。
別居を開始させたとしても、頻繁に夫婦が面会していたり、離婚協議や離婚調停といった離婚に向けた手続を進行させていない場合には、別居しているとしても、婚姻関係の破綻は認めにくいでしょう。
他方で、婚姻関係を継続させる意思がないことを明確にするメールやメッセージを送ったり、離婚届を提出する準備をしたり、別居がかなりの期間継続している場合には、別居により婚姻関係の破綻を認定される可能性はあるでしょう。
• 別居後の離婚手続の進行具合
• 婚姻関係を継続する意思の有無や程度
• 別居期間の長短
• 別居するに至った具体的な原因
などの事情を総合的に考慮して別居により婚姻関係が破綻するに至ったのかを判断していきます。
4-1.裁判例
肯定例 東京地裁平成30年2月26日
- 夫が詐欺罪の執行猶予付の有罪判決を受けた後も定職に就こうとせず、生活が不安定であったこと
- 妻は家計を助けるために仕事をしながら、次男・長女が生まれ、子育ての負担が増えたことで、精神的に疲弊していたこと
- 平成25年8月12日に別居開始させているところ、①と②が別居原因であったといえること
- したがって、婚姻関係は平成25年8月12日までには破綻していたと認められる。
肯定例 東京地裁平成28年9月29日
- 妻は、平成26年7月頃から.夫に対し、性格が合わない旨の不満を述べるようになり、少なからず離婚の話合いもするようになった
- 妻は、夫に対し、平成26年12月、離婚したい旨を述べ、白紙の離婚届を交付した
- 平成27年2月28日には,離婚届に記入等も済ませた上でこれを交付した
- 平成27年7月26日別居を開始した。
- 平成28年1月5日離婚した。
- 相手方が、夫婦が離婚する以前から妻と旅行に行くなどして接触を続けていた
- 婚姻関係は、妻が夫に対し白紙の離婚届を交付した平成26年12月頃には、既に破綻していたものと推認されるため、不法行為になるとはいえない
肯定例 東京地裁平成28年4月26日
- 些細な日常生活の出来事を巡って口論となることが多く、次第に不仲となっていった。
- 離婚を有利に進めるための証拠収集の一環として夫婦の会話を録音するなどの行動に出ていた
- 平成25年1月頃、妻は別居の準備を始め、同年2月18日、妻が自宅を出て別居に至った。
- 妻と相手方が平成25年秋頃には同居の上で交際していた
- 別居後、関係修復のために積極的に夫が妻に働きかけをした事実は認められないことなどからすると、婚姻関係は,遅くとも平成25年2月18日の別居から間もなくの頃には破綻していたことが認められる
否定例 東京地裁平成29年6月30日
- 8月27日、夫が妻に離婚を申し入れた
- その直前の8月17日には夫が長女を連れてそれまで居住していたマンションの部屋を出て、同じマンションの別の部屋に移った
- 家を出た8月17日から10日後に不貞行為に及んでいる
- 不貞相手と交際するようになった夫が一方的に妻に離婚を申し入れ、家を出た事実をもって,直ちにそのわずか10日後である不貞行為時までに婚姻関係が客観的に完全に破綻に至ったと認めることはできない。
5.弁護士に相談しよう
別居したことのみをもって婚姻関係が破綻していると判断されるケースは稀です。
別居に至る経緯、別居期間、別居期間中の生活状況を踏まえて、夫婦がほぼ離婚しているに等しい状況といえるかがポイントです。
時に、別居開始後の性行為を理由に慰謝料請求をしてくるケースはあります。
そのような場合でも焦らずに対応しなければなりません。
本来は慰謝料の対象とならないにもかかわらず、焦ってしまったために、いくらかの慰謝料の支払いに応じてしまっているケースも多々あります。
ご自身で頑張り過ぎずに、適切に弁護士に相談することが重要です。
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